プロジェクト
乗客乗員304人が死亡した2014年4月のセウォル号沈没から1年以上を経て、船骸の回収作業が開始しました。この惨事は、韓国沖合の黄海上で起きました。海洋水産部は、セウォル号を1年半という短期間で引き揚げる契約をChina Ocean Engineering Shanghai Company(COES)と結びました。この作業では、船内に残っている9人の犠牲者の遺体ごと、船体を破損することなくそのまま引き揚げることが求められました。また、冬には強い潮流と高波の中で作業を進める必要があったため、エンジニアリングソリューションの考案は一層難しいものとなりました。
ソリューション
船骸撤去作業は、オフショアプラットフォームの設置と類似していることから、COESは海中吊り上げ工法を採用しました。これには、船体両側にあるバージ船2隻と船体中央部をつないで側面から船体を吊り上げ、半潜水型船舶まで曳航するという手順が含まれていました。チームは、統合オフショアシミュレーションソフトウェアを使用して、船体をどのように吊り上げて係留するかをモデリングしました。半潜水型船舶で船体を運んで陸に下ろすための計画を練る必要もありました。クレーン船で船首を吊り上げて船体下部に33個のリフティングビームを挿入するための設計が求められました。チームはさらに、同アプリケーションで多数の解析を実行し、エンジニアリング効率と精度を改善しました。
成果
統合オフショアシミュレーションソフトウェアを使用した結果、難破船をそのまま引き揚げる世界初の事例となりました。この方法により、COESでは、ひと月あたり数百万米ドルを節約しながら、1週あたりのべ1,000人時を削減し、プロジェクトを予定通りに完了させることができました。また、船内に残っている9人の犠牲者の遺体を回収すると同時に、韓国政府の環境要件と経済的実行可能性を満たすことができました。現在、このソリューションは、大規模な難破船をそのまま回収するためによく使用されています。2019年2月にメキシコ湾底から引き揚げられ陸に移送された大型デリックバージもその例です。
ソフトウェア
MOSESソフトウェアを使用して解析を実行することで、エンジニアリング効率を改善し、プロジェクトのソリューションに関連するさまざまな衝突を解消しました。MOSESソフトウェアにより、3隻の船を視覚化して吊り上げと係留の解析を行うことができ、流体力学計算の精度も上がりました。さらに、海上での作業に費やすエンジニアリング時間数を削減し、韓国政府に要求されたスケジュールに合わせてプロジェクトを進めることもできました。
プロジェクトプレイブック: MOSES